「アクト・オブ・キリング」

映画「アクト・オブ・キリング」を観た。

1965年に始まったインドネシアの大虐殺。
権力を掌握したい側が「共産主義の脅威」を騙って煽った虐殺。
共産党員だけでなく、華僑やジャーナリスト、知識人、労働者・・・。
100万とも200万とも言われる人が殺された。
日本を含む西側諸国は、渦中のスハルト政権を支援。
CIAが抹殺したい「危険人物リスト」を政権側に渡したとも。
そして、虐殺を実行したのは、反共自警団や地元のギャングたち。

可愛い孫に、おしゃれな洋服、ダンス上手。
1000人殺したアンワルは、人生を楽しむ。

監督は、老いた虐殺者を誘う。
「あなたが行った虐殺を、もう一度演じてみませんか?」

映像は、どこまでも明るく美しい。
自然の色彩も、都会の街並みも、生命力が感じられる。
その明るさが、この映画の寓話っぽさを増す。
まるで、壮大なコント。

映画館のダフ屋だったアンワルが、共産主義者を殺した動機は、
彼らがアメリカ映画を追放しようとしたから。
パンチャシラ青年団のヘルマンが選挙に出たのは、
小さな権力でもあれば、みかじめ料が労せずして稼げるから。
自らは手を下さず、抹殺すべき人物を選別した新聞屋は、
「ただ共産主義者が嫌われるよう仕向けることが我々の仕事」。
州知事や副大統領は、反共青年団の必要性や利用価値を、臆面もなく語り、
青年団のボスは卑猥な言葉で女性蔑視を繰り返す。
その青年団の集会は、マッチョ右翼テイスト満載で、
団員は「おまえにとっての地獄は俺にとっての天国だ」という強姦マインド。

あまりに露骨であからさま。身も蓋もない。
だけど、しばらくすると気づく。
これって、オッサン政治あるあるやん。
何てtypical!
デフォルメされたオッサン社会がそこにある。
ただ、私らの社会では、オブラートに包んでるだけ。
尻尾を出さんように、言葉を選んで、
えげつないことも、えげつなく見えないように、気をつけてるだけ。

そういえば、北朝鮮のニュースとか見てて笑てまうことがある。
金主席の拍手の仕方、敬礼や整列の見事さ、ニュース原稿の読み方。
どれも極端すぎて、笑てまう。
その政権下に、投獄や飢えに怯える人が大勢いてても。
戦前の日本やナチスドイツの白黒映像も同じ。
何なん、これ、コントや~ん?

コントがおかしいのは、デフォルメされた人物の中に自分を見るから。
おかしな現象、おかしな他人という認識の、表層の下にある自虐。
壮大なコントに踊ってみせるアンワルは、私自身。
腐敗した権力構造を頂くインドネシアは、日本でもある。

そのことに気づいて起こる笑いに、監督は賭けてるんやと思う。
怖ろしいけどおかしい。
おかしいけど怖ろしい。
その笑いが、極端だった自分自身に気づく端緒になるから。
その自覚が、極端へと転がり始めるときのブレーキになるから。

だから、できるだけ多くの人にこの映画を観てもらいたい。
全世界の、特に政治家に観てもらいたい。
そして、神様に見透かされるような恥じらいを感じてほしい。

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「イェルサレムのアイヒマン」

「イェルサレムのアイヒマン」(ハンナ・アーレント著)。
絶滅収容所へのユダヤ人大量輸送を指揮したアイヒマンのイスラエルでの裁判記録。
罪に見合うだけの大悪人ではなく、ただの小役人やったアイヒマン。
アーレントは、「悪の陳腐さ」と、その普遍性への危機感を世に問うた。

・・・そんな本やと思って読んでみたら、ちょっと違ったかも~。
実は、彼女は「オッサンら、ええかげんにせーよ」と怒ってるんちゃうやろうか。
ナチズムにも、成り上がりの小役人にも、ドイツにも、ナチに占領された国々にも、
連合国にも、シオニストにも、イスラエルにも、
「ねぼけてたらアカンで。」と言うてるように思う。

このホロコーストでは、600万以上の人間が殺された。
特定の民族を殲滅するという、信じられんことが実行されてる。
彼女は、この「人類に対する罪」の本質が明らかになるのを見たかった。
なのに、オッサンらは、本質とは違う側面を、あっちこっちつつくだけ。

イスラエルは、アイヒマンと全ホロコーストを結びつけたがり、
裁判が明らかにすべき真実を置き去りにしてでも、イスラエルの物語を見せ物にする。
連合国は、自らの「人道に対する罪」をスルーして、敗戦国とその手先を裁く。
原爆も無差別空襲も「虐殺」とどこが違う?
ユダヤ人指導者たちは、ナチと取り引きし、
金と地位に基づいて自分らで民族を選別し、ナチの「輸送」に手を貸したよね?
ドイツでも被占領地でも、活動家たちは「国内亡命」で抵抗したからエラいって?
それが、無責任で楽天的なヒロイズム、自己満足の抵抗運動であっても?

いやいやいや、オッサンら、結局、自分の利益ばっかしやんか。
権威、大義、自己顕示欲、保身・・・。
いちばん大事やったんは、人の命ちゃうん?
いちばん明らかにすべきなんは、何でこんな恐ろしいことが起きたんかやん?
人1人もまともに裁かれへんのに、この虐殺の本質なんてあぶり出せるかいな。
オッサンら、えーかげんにしてくれよ。

と、アーレントねーさんは言うてるんちゃうやろうか。

確かに、アイヒマンの凡庸さは戦慄もんやと思う。
雑魚感たっぷりの脇役のくせに、脚光をあびて満足げなアイヒマン。
「知性」や「上流」にあこがれながら、劣等感を抱え、
庶民出の人間が国家の首長になるというヒトラーの物語に酔いしれた彼。
「下克上、上等!」って、ありゃりゃ、まるっきりヤンキーやん。

同時に、ナチの台頭を許した社会の、空気感はもっと怖い。
市民が、ナチの極端さを現状打開の切り札と勘違いしたのは、わざと?
これって、無責任な快楽主義が行きつく自己欺瞞なわけ?

アーレントねーさんが危機感抱くのもムリはない。
しかも、どこをとっても「今」と重なる恐ろしさ。
ねーさん、私らはどーしたらええんやろうか。

ハッキリしてることがあるとすれば、
歴史の表舞台にしゃしゃり出てくるオッサンらに、まかせといたら危ないってこと。
何をいちばん大事にするのか、思考から編みだす言葉を持ちたいとこや。
せやんな?ねーさん。

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ゆりひなな

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おもしろい記事書くために、おもしろい生活できたらええなぁ。その逆でもええけど。

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